最高裁判所第一小法廷 昭和52年(オ)1057号 判決 1979年2月22日
上告人
大阪商事株式会社
右代表者
尾谷進
上告人
準学校法人大阪経理経済学園
右代表者
金澤尚淑
右両名訴訟代理人
三瀬顕
外四名
被上告人
株式会社梶浦組
右代表者
梶浦謙三
右訴訟代理人
中務嗣治郎
外四名
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人三瀬顕、同近藤正昭、同下村末治、同野間督司の上告理由第一、第二について
仮登記担保関係において、債権者が、右設定契約の際債務者から交付を受けていた登記手続に必要な書類を利用し、債務者に債務の履行遅滞があつたとして目的不動産につき仮登記に基づく所有権移転登記手続を了したとしても、仮登記担保権の行使による所有権取得のためには清算金を支払う必要がある場合においては、債権者において債務者に対し右清算金の提供をするまでは、債務者は債務を弁済して仮登記担保関係を消滅させることができると解すべきであり、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。なお、所論は、原審が上告人による仮登記担保権の行使が信義則に違反するとした点につきその解釈適用の誤りをいうが、右のとおり、清算金の提供のない本件においては、被上告人は債務を弁済して本件仮登記担保関係を消滅させることができるのであるから、所論は、結局、判決に影響を及ぼさない事項についての原審の判断を論難するものにすぎない。論旨は、採用することができない。
同第三について
原審が適法に確定した事実関係の下において、被上告人は、本件不動産につき上告人大阪商事株式会社から所有権移転登記を経由した上告人準学校法人大阪経理経済学園に対し、本件不動産の取戻権を対抗することができるとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(本山亨 団藤重光 藤崎萬里 戸田弘 中村治朗)
上告代理人三瀬顕、同近藤正昭、同下村末治、同野間督司の上告理由《省略》